最近、人気の精油ブランド11社の製品から、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)であるフタル酸エステルが検出されたという報告があり、アロマ業界では混乱が続いています。
今回の調査結果を発表した「MAMAVATION(ママベーション)」は、2023年11月また今年1月にも子供向け食品やオーガニック製品、植物油からフタル酸エステルが検出された調査結果を公開しています。
フタル酸エステル問題が話題となる中、MAMAVATIONが注目を集めています。
私自身もこの件がなければ知ることはなかったであろうサイトです。
日本ではあまり馴染みのないサイトだと思いますので、初めて耳にした方も多いのではないかと思います。
このサイトの情報を最初に共有してくださった方に感謝申し上げます。
そこで、初めて情報を目にする方々のために、改めて精油の安全性について知識を深め、MAMAVATIONがどのような存在であるかについても触れておきたいと思います。
また、過去記事『人気精油ブランド11社の精油からフタル酸エステルを検出:衝撃の報告 』も合わせてご覧いただければ幸いです。
Mamavation(ママベーション)とは
Mamavationは、消費者の健康と安全に関する問題を取り上げ、調査と情報提供を行うウェブサイトです。
特に環境や食品、化学物質の影響に関する情報に焦点を当てています。
このサイトは、家族や子供を守るために有益な情報を提供し、健康に悪影響を与える可能性のある有害物質からのリスクを減らす活動を行っています。
MAMAVATIONの調査は、科学的なデータと専門家の意見を基に、製品に含まれる有害物質について消費者に知識を提供し、消費者がより健康的な選択をできるよう支援しています。
MAMAVATIONは、業界の製品の一部を抜き打ち検査しており、その結果を公開しています。
MAMAVATIONのサイトには、主にAmazonのアフィリエイトリンクが含まれており、アフィリエイトの売上の一部を受け取って調査費用に充てています。
また、「Environmental Health Sciences」を通じて消費者調査への寄付も受け付けています。

精油から検出されたフタル酸エステルの危険性とは?
今回の調査結果では、11社の精油から12種類のフタル酸エステルが検出されました。
この12種類のうち、3種類がEUのRoHS指令で使用が制限されている10種類の有害物質に含まれていたことに、大変驚きました。
精油から検出された規制対象の化学物質は以下の3つです。
・DEHP(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))
内分泌かく乱、生殖問題、発達問題、肝臓および腎臓毒性、喘息およびアレルギー、甲状腺障害との関連が指摘されています。
主な用途:壁紙などの建築製品、ビニール製の衣類 、自動車製品、食品包装、医療機器、子供用玩具
・DBP(フタル酸ジブチル)
胎児の発育に有害であるとされています。皮膚への刺激や内分泌かく乱のリスクがあるため、EUでは化粧品への使用が禁止されています。
主な用途:塗料、顔料、接着剤、合成レザー・塩化ビニル樹脂可塑剤、香料の溶剤、織物用潤滑剤、ゴム練り加工剤、農薬の補助剤
・DiBP(フタル酸ジイソブチル)
動物の体重、生殖及び発育に影響を与えることが確認されています。
主な用途:プラスチックの柔軟性を高める可塑剤、接着剤、塗料、インク、香料の溶剤

RoHS指令とは?
RoHS指令(ローズ指令)とは、EU(欧州連合)で定められた、電気や電子機器に使われる有害な化学物質を制限するための指令です。RoHSは、「Restriction of Hazardous Substances」の略です。
この指令は、環境や人々の健康を守るために、製品のライフサイクル全体(製造から廃棄まで)を通じて、使用される有害な化学物質を減らすことを目的として作られました。
2003年2月に公布され、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の6物質が規制されましたが、2015年の改正により、フタル酸エステル(DEHP、DBP、BBP、DiBP)4物質が追加され、合計10物質の使用が制限されています。
これらは製品の製造過程で使われることが多いですが、環境や人体に悪影響を与えるため、特に規制されています。
RoHS指令は、環境に優しく、安全な製品を作るために欠かせないルールとして存在しています。

まとめ
フタル酸エステルは、特に内分泌かく乱、生殖障害、発達障害などの健康リスクが指摘されており、これらが精油に含まれている場合、消費者の健康へのリスクが高まる可能性があります。
RoHS指令により指定されている物質が精油に含まれていたことは、大変衝撃的です。
この調査結果は非常に重要であり、消費者にとって、より安全な製品を選ぶための貴重な情報を提供してくれたと感じています。
精油の飲用や希釈なしでの塗布が可能とされるブランドもありますが、飲用や希釈せずに塗布することは避けた方が良いです。
また、重要なのは、今回発表された11社のメーカーを避ければ安全というわけではないということです。
今回ランダムに選出されたメーカーの結果であり、他のメーカーの精油が安全であるという証拠はありません。
この問題が注目されることで、今後、精油やその他の製品に対する規制が強化される可能性もありますし、製品の安全性がより重視されるようになるかもしれません。
調査結果が明らかになったことで、製造業者や販売業者はフタル酸エステルの混入に対して注意を払い、消費者が安心して使用できる製品を提供することが求められます。
私たちも、精油の安全性を意識し、慎重に選ぶ必要があります。
今後、アロマ業界全体がより安全で信頼される方向へ進むことが期待されます。
また、フタル酸エステルは、化粧品、シャンプー、香水、マニキュア、芳香剤、洗剤、ビニール製品など、私たちの身近な製品にも含まれている可能性があり、今回の問題は、精油だけに限った問題ではないことを理解していただきたいと思います。
身近な製品に潜む化学物質の危険性を知ることは、私たちの健康を守るために非常に重要なことです。

参考文献:
- MAMAVATION/Essential Oils Tested for Toxic Phthalates — Guide
- MAMAVATION/Cooking Oils Tested for Phthalates — Comprehensive Guide
- MAMAVATION/Shocking Study Finds Phthalates in Organic Dairy Products & Oils — Guide
- 経済産業省/化学物質管理
- 経済産業省/「米国及びEUにおける内分泌かく乱作用の規制動向」-2018/7
- Regulation – 2016/679 – EN – gdpr – EUR-Lex
- 厚生労働省/職場のあんぜんサイト-フタル酸ジ-n-ブチル
- 厚生労働省/職場のあんぜんサイト-フタル酸ジイソブチル
- 厚生労働省/職場のあんぜんサイト-フタル酸ビス(2‐エチルヘキシル)