北枕が不吉とされる理由
「北枕」と聞くと、日本では「縁起が悪い」と連想する人が多いと思います。
お釈迦様が入滅されたときに北枕で横たわっていたことから、死を連想させると言われるようになったのが由来のひとつ。
しかし、歴史を紐解くと、必ずしも悪い意味だけではなく、むしろ健康や運気UPに良いとされる説も残されています。
徳川家康と北枕の秘密
天下人となった徳川家康には、風水に通じた「天海」という名参謀がいました。
家康は天海の教えに従い、北枕で眠っていたと伝わっています。
一説によると、家康は自分以外が風水で天下を取ることを恐れ、わざと「北枕は縁起が悪い」という噂を広めさせたとも言われています。
「北枕=不吉」というイメージは、権力者の戦略によって広まった可能性もあるのです。
徳川家康は没後、静岡の久能山に葬られましたが、その後に改葬され、日光東照宮に「東照大権現」として祀られました。
日光は江戸城から見て「北東=鬼門」にあたり、そこに家康を祀ることで江戸の都を魔や災厄から守護させたと考えられています。
奈良の平城京や京都の平安京の造営にも風水の知識が盛り込まれていたことを考えると、当時の人々が自然の力を意識して暮らしていたことがわかります。
風水から見た北枕
風水では北は「水の方位」、南は「火の方位」とされます。
頭を北に、足を南にして眠ることは「頭を冷やし、足を温める」エネルギー状態をつくり出すとも言われています。
そのため北枕は「不眠の特効薬」と言われることもあり、自然界の動物たちも北や南を向いて眠っているという研究結果もあります。
科学的に見る北枕のメリット
科学的な視点からも、北枕が良いとされる根拠はいくつかあります。
ヨーロッパの調査で、Google Earthの画像を使って牛や鹿が寝ているときの向きを調べたところ、北か南を向く傾向がはっきりと見られました。
これは動物が地磁気を感知している証拠とされています。
動物だけでなく、人間にも地磁気を感知する能力が潜在意識下で残っていることが、東京大学とカリフォルニア工科大学の共同研究によって示されています。
さらに、地球の磁場と同じように、人間についても、頭をN極(北)、下半身をS極(南)とする説があり、磁場に沿って眠ることで血液や水分代謝が自然な流れを保てると考えられています。
現代環境の影響
一方で、鉄筋建築物や電車・車など鉄で囲まれた空間では地磁気が弱まり、そのような環境で暮らす現代人には「磁気欠乏症候群」に陥っているという研究者もいます。
実際に人為的に地磁気を遮断した場合、中枢神経系や体内リズムに異変がみられるという報告もあります。
近年の研究では、人工的な電磁ノイズが渡り鳥の磁気感知能力を妨げることが確認されました。
人間でも地磁気の変化に脳波が反応する例があり、電磁波が磁場感知に干渉する可能性が示されています。
そのため、鉄筋の建物や高層階、電磁波の多い環境では、「北枕」の効果が十分に発揮されにくいとも言われています。
まとめ
北枕は「縁起が悪い」とされてきましたが、歴史的には徳川家康が実践していたとも伝わり、風水や科学の視点からはむしろ良い影響がある可能性もありそうです。
私自身、朝起きると自然に頭が北を向いていることがよくありました。
南東向きの家なので、ベッドに斜めに寝ている形です。
今はそうならなくなってしまいましたが、磁気を感じ取る感覚が鈍ってしまったのか、理由はわからないままです。
現代の生活環境では鉄筋の建物や電磁波の影響によって効果が十分に発揮されにくいとも言われています。
ときにはキャンプに出かけたり、ログハウスなど自然に近い場所で過ごしてみたり。
住まいは簡単に変えられませんが、寝室に家電やスマートフォンを置かない(あるいは機内モードにする)など、環境を整える工夫をするだけでも、また違った眠りを体験できるかもしれません。